



医師であるご夫婦による心療内科と内科の併用クリニックの計画である。敷地は福岡を南北に繋ぐ西日本鉄道の駅の近くで、地理的には朝倉・甘木へと東に抜ける分岐点でもある。よってバスや自動車による交通量も多いが、既設道路には歩道がないなど、環境的に難のある道路に面している。道路沿いの周辺の建築も、住宅や低層店舗などが多く、道路際に塀があるところも少なくない。そんな立地に来られる患者さんのことを優先し、車の寄り付きや目の前のバス停など、公共空間に優しく接続するイメージが大きなコンセプトの一つとなった。何も考えずヴォリュームを築くと、懸念される公共空間との分断が生まれかねない圧迫感となりそうなので、道路と直行する3つの短冊状にヴォリュームを分け、近寄りやすく寄りつきやすいセーフゾーンの形成を試みた。特に中央のヴォリュームは、街とやさしく接続する引き込み空間とすることで、プライバシーを重んじる医療施設ならではである導線計画等にも寄与するよう検討し、奥には中庭を設けて道路からのアクセスの先を閉鎖感の無いよう配慮している。そしてその2階を待合室とすることで、全面道路からルーバーを介して中庭に続く明るい空間を確保することができた。外壁にはガルバリウム鋼板仕上げと左官塗り仕上げを主にし、公共空間からの連続性を重んじる空間には左官塗り仕上げとし、他の閉鎖性の高い面積の広い壁には、ガルバリウム鋼板一文字葺きを採用した。面積の広い壁に繊細な線が入るデザインとすることで、圧迫感ではなく街のシンボル的に親しみあるデザインとして溶け込むことを意識している。








photo by Yousuke Harigane